目標17 持続可能な開発を推進する手段の強化と、世界的なパートナーシップの活性化

 目標17は、持続可能な開発を推進するために必要な資源やアプローチを多面的にカバーしている。その内容は、ODAなど開発途上国への国際的な支援にとどまらず、科学技術イノベーションに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力や、公平な多角的貿易体制など多岐にわたっている。この他にも、公的、官民、市民社会のパートナーシップ、政策協力、環境に配慮した技術の開発、信頼できるデータ(データは、収入、性別、年齢、人種など各国の状況に即した様々な属性ごとに分類されたものであるべきと明記されている)の重要性も指摘している。
 ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」は、日本の目標17の達成度について「重要な課題がある(Significant challenges)」であるという評価を下している。

*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)

目標16 平和で包摂的な社会、正義へのアクセス、効果的で責任のある包摂的な制度

 目標16は、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築するということである。達成目標(ターゲット)には、「すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる」、「子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する」、「国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する」などがある。
 さらに、説明責任や参加型の意思決定を確保し、基本的人権と自由を保障することも含まれる。東日本大震災の復興の過程において住民に対し十分な説明責任が行われてきただろうか。
 政府による「SDGs実施指針」の2019年改訂版では「17のゴールと169のターゲットは統合され不可分のもの」、2023年改定版では「SDGs は全体として一体で不可分」ということが強調されている。平和、公正、の包摂的な社会は、目標 1から目標15の達成なくして実現しない。
 ベルテルスマン財団・SDSN*の「持続可能な開発報告書2024」は、日本の目標16の達成度について「課題が残る(Challenges remain)」という評価を下している。「重要な、あるいは深刻な課題がある」のではないだろうか。

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広島

8月に広島平和記念公園に行って来ました。
30年ぶり二度目です。
今回は一度目とは違う思いで広島の街を歩きました。
あの日から70年ほど経ち、街は繁栄していますが、
何とも言いようのない重苦しさを感じました。
広島と福島。
過ちはもう二度と繰り返して欲しくないです。
子どもたちの未来のために。

マリリン
広島県広島市広島平和記念公園 2016年8月 撮影


意味のないアンケート

何回も来る、県外に出てる被災者向けのアンケート。
何を書いても状況が変わらないから、アンケートに答えるのも
嫌になってきた!!
故郷(ふるさと)からの便(たより)は、
ほとんどが私にとって意味がなく感じてしまう。

M
東京都下仮設住宅 2014年9月 撮影


ガラスバッジは何のためなのか

原発事故後、個人の被ばく線量を測るため市民に
ガラスバッジ(個人被ばく線量計)が配られた。
しかし、ガラスバッジ を身につけている人はほとんどいなかった。
市はガラスバッジの着け方を市民に教えていないし、
つけているかどうかも問題にしなかった。
こうして市民の“安心”と“健康管理”のために税金が使われ、
”科学的”データが収集された。
でも、なかには将来誰かのために役立つと願って、
測定に協力していた人もいる。

市は、住民が自主的に除染することを「奨励」した。
避難も、除染も、自己判断… 結局、市民は切り捨てられた。
ただ健康管理という名目で”科学的”データがとられただけだった。
いったい誰のために、何に、使うのですか。

ストラップには「がんばろう日本!」と書いてある。
何をがんばれというのですか。

ake
福島県伊達市 2015年8月 撮影

目標15 陸の生態系や森林の持続可能な利用と、砂漠化、土地の劣化、生物多様性損失の阻止

 目標15の達成目標(ターゲット)には、「森林の持続可能な経営の実施促進や劣化した森林の回復」、「世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる」などがある。また、干ばつや洪水の影響を受けた劣化した土地と土壌の回復、生物多様性を含む山地生態系の保全も重要である。
 東日本大震災は土地の劣化や、陸の生態系にさまざまな影響をあたえ続けている。福島県では、森林は除染されず、山林近くの住宅、市街地などは風や水の影響で放射能汚染が続いている。
 政府の「SDGsアクションプラン2023」では、農林水産業でのグリーン化を促進する取り組みや、デジタル技術を活用した中山間地域等の活性化などを取り上げている。しかし、原発事故による汚染に関して、森林が除染されていないことや、除染土の最終処分地が決まっていないこと、除染土を農地や公園の花壇、道路補修に用いる計画などには言及していない。目標12~14と同様に、ベルテルスマン財団・SDSN*の「持続可能な開発報告書2024」は、目標15について「深刻な課題がある(Major challenges)」と最低の評価を下している。

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かさ上げして新しい土地を?

その後の閖上に行きました。住宅地がほとんど津波被害で流され、犠牲者も甚大な土地です。
風雨にさらされたかさ上げの現場。
近くに団地型の復興住宅が建設中でした。
このようなひび割れた盛り土の上に建築する?
こんな復興の仕方で大丈夫? 

M. SATO 
宮城県名取市閖上(ゆりあげ) 2016年12月 撮影


おデブちゃんイノシシ確保!

帰還困難地区の家庭の庭先で罠(わな)にかかったイノシシ。
人々が避難して、その土地に人がいなくなったので、山から出てきて増えた。
畑や庭、家の中に入り込んで、好きなように
食い散らかしていた。

横 田 
福島県郡山市内 2019年6月 撮影 


無くならない放射能

原発事故の目に見えない被害は精神的なことも含めていろいろあります。

土壌の汚染は一般には知られていない。
各地の市民が自ら土壌の放射能を測定して出来たこの地図は、その状況を目に見える形で示している。

それがクリアファイルになって私の手元にある。

原発事故から放出された放射能は100年たってもまだ消えない。
過去のことではなく、現在進行形ということを伝えたい。
出典:【図説17都県放射能測定マップ+読み解き集】2019 年
発行 みんなのデーターサイト出版

megmeg 
東京都 2020年1月 撮影

目標14 海洋・海洋資源の保護と持続可能な利用

 目標14の達成目標(ターゲット)は、「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染などあらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」、「2020年までに、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行なわねばならない」などである。海上保安庁によると2020年までに日本周辺海域において確認した海洋汚染の件数は453件である。その汚染物質は油、廃棄物、有害物質などであり、一般市民によるものが95件にのぼる。
 東日本大震災により東北沿岸部の漁港や養殖場、水産加工場や市場などが津波や地震による地盤沈下など甚大な被害を受けた。豊かな海の資源は東北沿岸部の経済を支えてきた。しかし、津波被害により沿岸の環境と生態系は劣化し、地元の人々の雇用・生計手段が奪われた。福島第一原発での事故による汚染水の処理も深刻な課題である。
 ところが、政府が国連に提出した「自発的国家レビュー2021」(SDGsの達成状況に関するレポート)も、全99ページに及ぶ「SDGsアクションプラン2023」も、原発事故に起因する汚染水の問題について何ら言及していない。ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」は、目標14 の達成度について、前年同様「深刻な課題がある(Major challenges)」という最低評価を下している。

*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)


大漁祈願

「津波後3年間は漁はふるわない」と言い伝えられている。
漁業者たちは待っていられない。
津波でいなくなった魚たちの回帰を願い、モクモクと手を休めず
網づくり作業に祈りを込める。(責任者の許可を得て撮影)

はまなす
岩手県沿岸地域 2013年5月 撮影


世界三大漁場・金華山沖への玄関口

本州の中で、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の震源地に最も近い港。

このとき114cm地盤沈下した海には、岸壁が「沈んで」いた。

あれから一年。

復旧工事は少しずつだけど、しかし確実に進んでいる。

岸壁も見事復活を遂げ、

いまでは海の上で堂々と胸を張っている。

やっぱり岸壁はこうでなくちゃね。

きょうもここから漁師さんたちが勇ましく沖へ出ていく。

宮城県石巻市鮎川 2012年11月 撮影


宮古港に水揚げしたサンマ船

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

昔は、宮古港はサンマ船の出漁港で、にぎやかに出航していた。
漁をしてきたサンマ船が荷上げのため停泊していた。
昔を思い出して撮りました。

三浦千代子
岩手県宮古市 2012年11月 撮影


10年頑張ってきたのに

福島の海は豊かな漁場です。
でも、原発の爆発で出漁は禁止された。
10年という長い忍耐のあと、やっと出漁の許可がおり、買い控えも収まりつつあった。
政府も「地元の了解がなければ汚染水の海上放出はしない」と約束した。
漁業者はやっとほっとして漁に出た。
それなのに、今政府は平気でその約束を破ろうとしている。
破られるというのは私たちを大切な国民とみていないから?
海を大切な生命の源と捉えていないから?

よしみ
宮城県仙台市 2021年4月 撮影

目標13 気候変動や自然災害の影響への対策

 気候変動や自然災害の影響への対策は、地球全体の課題である。目標13の達成目標(ターゲット)のひとつは「すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する」である。このターゲットは、災害大国の日本にとっては急務であり、さまざまな対策がとられてきた。しかし、東日本大震災後の防災や復興計画の策定や実施において、住民の意思やニーズがどれだけ反映されているのか、など課題は多い。
 政府による「SDGs実施指針」(2023年改定版)は、「我が国として、脱炭素の取組と同時に、強靭なエネルギー需給構造への転換を含めたエネルギー安全保障を強化する。環境と調和のとれた食料システムの確立を図りつつ、食料安全保障を強化する」と述べている。一方、ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」は、化石燃料の燃焼やセメント製造にともなう二酸化炭素(CO2)排出量などを問題視し、目標13 の達成度について前年同様「深刻な課題がある(Major challenges)」という最低評価を下した。

*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)


水害で上がった放射線の数値

2019年10月の台風19号は郡山市に大きな被害をもたらした。
私たちのNPOの事務所も逢瀬川(おうせがわ)のそばにあったため、約1m床上浸水。
水が引いてからそばの花壇の土の放射線を測ったら、通常は0.08~0.2マイクロシーベルトなのに0.3を
越えて高かった。市に連絡して台風で被害を受けた
場所の線量を市が測ったが、高くはないと問題にされなかった。

ゆき
福島県郡山市 2019年10月 撮影


がけくずれ

ここが地域避難所?
くずれているよ!!
誰決めたの?

H.Yamamoto
宮城県仙台市 2014年5・6月


大自然の脅威

子どもの頃、海水浴や海藻取りで遊んだ、いわば私たちに
とってのホームグランドです。
津波で歩道橋が落ちてしまいました。自然は科学よりも強い!


岩手県宮古市鍬ヶ崎(くわがさき)蛸(たこ)の浜 
2012年1月 撮影


被災地を生きた長靴

がれきがいたるところにあって、水がひかない。
長靴は必需品。でも、なかなか手に入らない。
避難所で見つけて手にいれた白い長靴。
がれきを踏みしめ、海水をかきわけ、
多くの人の足となり被災地をかけまわった。
それは海外からの研修生が使っていた水産加工会社の長靴。
感謝。

ユッピー
宮城県女川町 2014年11月撮影

目標12 持続可能な生産・消費形態

 目標12には「2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する」や、「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」などの達成目標(ターゲット)が掲げられている。経済発展のための大量生産・大量消費は、これらの達成目標と真逆の行為にあたる。
 ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」では、多量のプラスチックごみの輸出量が問題視され、目標12 の達成度について、前年同様「深刻な課題がある(Major challenges)」という最低評価が下された。達成目標である「健康や環境への悪影響を最小化する」ためには、プラスチックごみの輸出量削減のみならず、福島第一原発事故による汚染廃棄物の処理が不可欠であるのは誰の目から見ても明らかであろう。

*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)


住宅敷地内の放射性廃棄物

中間貯蔵施設、最終処分場が決まらず、各家庭の廃棄物は
庭先に積まれたまま数年が経過。
廃棄物の詰まった袋がコンクリートの容器からはみだしている。
中には袋から草が生えている場合もある。
こんな状態がいったいいつまで ?

山桜
福島県郡山市 2016年7月 撮影


地産地消!は、崩れた

311が起こり、地産地消を当たり前のこととしてやってきていた生活も食料の確保もすべて吹き飛んだ。
2012年春に避難場所を東京の西側に移した。那須の時期ではないのに放射能検査をしていない食料を手にすることができなく、
唯一西側での栽培物のナスを買うことしかできなかった。
おかげで、避難させた息子は春でも冬でも季節じゃないナスばかり出されてナスが大嫌いになった。
水もわざわざいろいろ調べて安全と思える非加熱の水を手に入れて飲む生活。
地産地消は土地が汚染されて机上の論理となり果てた。
 今は、夏のナスを、近郊のところで取れたのを息子が大きくなり遠方に行ったために存分に食すことができるが、あの月日は戻せない。

gusyo
東京都 2024年7月 撮影 2024年11月 声作成


瓦礫(がれき)といわないで

津波のあと、集められて、見上げる高さの「瓦礫集積所」
近づいてみると どれもこれも 生活で使われていたもの
一つひとつに、生活野歴史がああった。
暮らしていたこの場所にさらされて、
瓦礫なんて言ってほしくない。

Tamami
宮城県多賀城市 2011年7月 撮影 2024年10月 声修正

目標11 包摂的で安全な、強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び居住

 持続可能な都市及び住居に関する目標11は多岐にわたる。達成目標(ターゲット)には、安全、安価な住宅、生活上の基本的サービスへのアクセス(11.1)、女性・子ども・障害のある人、高齢者たちのニーズに配慮した輸送システムへのアクセス(11.2)などが掲げられている。また、大気の質や廃棄物の管理など環境上の悪影響の軽減(11.6)という達成目標は、原発事故によって放射能被災にさらされた人々への影響と関連する。文化遺産や自然遺産の保護・保全(11.4)も目標11の達成目標である。注目に値するのは、水関連災害などによる死者や被災者数の大幅削減(11.5)という、直接災害に関する達成目標も明記されていることだ。
 しかし、政府が国連に提出した「自発的国家レビュー2021」(SDGsの達成状況に関するレポート)は、災害時の緊急支援や被災者生活再建支援法などの法規、防災基本計画などには言及しているが、災害時・災害後のまちづくり、住宅再建等に全くふれていない。
 ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」は、家賃負担が重い人の割合の増加などを考慮して、前年の「課題が残る(Challenges remain)」から「重要な課題がある(Significant challenges)」に目標11の達成度の評価を下げた。

*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)


草木に埋もれる我が家

帰還困難区域の我が家。
8年間住むことができず、植木が生い茂っている。
復興、復興と言われるが、前のような町に戻れるのか。
以前は見通せた我が家が、今は見えないのと同じように、
先が見えない。

吉田
福島県富岡町 2019年10月 撮影


生まれ育った浜に帰る

この地が自立再建する高台です。
この場所に立った時、忘れかけていたいろんな思い出が甦り、
何ともいえない心境でありました。
でも、残りの人生この地から再スタートしなければなりません。
不安でいっぱいですが、前向きの姿勢で頑張っていきます。

オモティ
宮城県女川町 2014年8月、2015年11月、2016年10月 撮影


獅子振り

小さな集落の伝統行事の獅子振り。
太鼓と笛の音色が大好きです。
でも、震災のあとの復興へのイベントに獅子振り?
土地も家もないのに、何が復興なの?
素直に心から楽しむことのできない自分にイラついていました。
今は、太鼓と笛の音にワクワク。
こんな気持ちを取り戻させてくれた喋々、ありがとう。

ルアバーバ
宮城県沿岸部 2015年1月 撮影


しぶとく、何度でも

2011年12月、自宅を解体した。
心と体のバランスを崩すほど、自分にとっては大きなショックだった。
出来るなら忘れたくて、道路すら避けていた。
それでも…と、一年三ヵ月ぶりに訪れた跡地。
そこには、震災前に植えていた、ふきのとうが芽生えていた。
今はまだ、現実を受け止めきれずにいるけれど、
いつかこのふきのとうのように、しぶとく、強く生きたい。

Y.S
宮城県石巻市 2013年3月 撮影

目標10 国内及び各国間の不平等削減

 性別、年齢、障害、人種、民族、出自、宗教、経済的地位による差別など、日本において削減すべき不平等は枚挙にいとまがない。差別的な法律、政策及び慣行を撤廃し、平等を推進するために必要な税制、賃金、社会保障政策を導入することなどが達成目標(ターゲット)に掲げられている。
 日本の現状はというと、格差は様々な面で拡大している。政府が国連に提出した「自発的国家レビュー2021」(SDGsの達成状況に関するレポート)は、都市部と地方部の格差、ひとり親世帯や高齢者世帯とそれ以外の世帯との格差がより顕著になっていると述べている。
 災害時には平時の不平等や格差がさらに大きくなる。東日本大震災では多くの人が被災し家を失った。立場や経済力などの差は、自宅を再建するか災害公営住宅に住むかなどの選択に直結する。
 原子力発電所の事故で福島県民は甚大な被害を受け、放射能汚染の影響は続いている。福島で作られた電力の大部分は首都圏に供給されていた。東日本大震災から14年が経過した現在、首都圏では震災の記憶も影響も薄れている。不平等はこんな形でもあらわれている。
 ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」は、日本における目標10の達成度には「重要な課題がある(Significant challenges)」という評価を下した。目標10を達成するための抜本的な取組が必要である。

*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)


ちょっと違うんじゃない

「東京オリンピック」素晴らしい、こんな予算と施設を考えることが・・・
まるで、遠い、よその国の話題のようです。
震災後、なでしこジャパンの大活躍を避難所のテレビで
沢山の人達と応援し、日本女性のしなやかさと力強さに感激し、
勇気をもらった。
他のスポーツ選手にも、忘れられない勇気と暖かさと感動をもらった。
できるなら、一緒に東京オリンピックの感動を味わいたい、
心から応援したい。
この気持ちは変わらないが、自分が現実に生きるところを見ると、
東京に建設が集中しつつあり、被災地は人手不足と資材不足による
物価の高騰。
復興集合住宅1 軒分が3800 万円で建設されるという。
都市のマンション並の価格ではないか。
なんとも腑に落ちない

ラマラマ
宮城県女川町 2015年7月 撮影


仙台パワーステーション発電所。電力は首都圏へ、利益は関西へ、汚れた空気だけ被災地に

被災地では、離れざるを得なくなったふるさと、住み慣れた地域、
そして隣人との思い出を何かに残そう、新たにつなげようと今もなお、努力する人々がいる。

一方、資本・大企業は惨事に便乗し利益をあげようと、
そうした被災地の安い土地に時代遅れの石炭火力発電所を次々に建設しようと集まって来る。

国も、石炭火力発電を原発とともにベースロード電源に位置付け後押ししている。
仙台パワーステーション発電所は関西電力と伊藤忠商事の関連会社がつくった環境アセスメント逃れの小規模発電所。
4キロメートル圏内には23も学校があるというのに。
地元東北電力の火力発電はLNG(液化天然ガス)を燃料にしているというのに。

遠い被災地だから、「あっちのほう」だからできることなのか…。
被災地ではいっそう大きく、悲しみと怒りが渦巻いている

福島かずえ 
宮城県仙台市 2018年1月 撮影

目標9 強靭(レジリエント)なインフラ、包摂的で持続可能な産業化とイノベーション

 目標9がどんな内容なのかは一読しただけではつかみとりにくいのではないだろうか。達成目標(ターゲット)9.1は「すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱なインフラを開発する」である。ただ単に強靭なインフラやイノベーションが求められているのではなく、インフラやイノベーションは、すべての人がアクセスできる公平な経済発展および福祉を支えるために必要なツールということを忘れてはならない。
 東日本大震災は、インフラに大きな打撃を与えた。災害からの復興には、道路鉄道、橋梁、港湾施設などハード面のインフラの復旧が急務である。復旧された鉄路や漁港、再建・新築された駅舎などが住民に与える希望やよろこびは計り知れない。しかし一方で、鉄道の復旧の遅れや採算があわない路線をバス輸送に切り替えるなど、公平なアクセスに逆行する動きもみられた。さらに、復旧・再建された駅舎が、障害を持つ人々、乳幼児を抱える人や高齢者のニーズへの配慮を欠いているケースも見られた。多様性への配慮は持続的な社会に不可欠だ。
 ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」は、前年にひきつづき、日本において目標9は「達成済(SDG achieved)」という評価を下した。この評価は甘すぎないだろうか。

*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)


寸断された鉄橋

JRの宮古―釜石の鉄路は、未だに手つかず。
特に高校通学に不便さをもたらしている。
進路選択に交通の便が影響しないように、
復興に力を注いでほしい。

さくら
岩手県宮古市宮古橋 2013年11月 撮影


繋がった鉄橋

5年の時を経て復旧した鉄橋。
列車運行にはまだまだ時間を要するが、
希望に向かって「出発、進行」!

さくら

岩手県宮古市宮古橋 2016年8月 撮影


理解に苦しむ「復興」― 住民の生活の実情は反映されていない

ここは、三陸鉄道の山田駅。
津波で流出し、火事もありました。
新しく造られた駅は、やっぱり昔のままの階段だけ。
エレベーター、エスカレーターもスロープもない。
高齢者が多い町なのに。

ぴーなっつ
岩手県山田駅 2019年1月 撮影

目標8 持続可能で包摂的な経済成長、ディーセント・ワーク(生産的で、働きがいのある人間らしい仕事)

 目標8には「経済成長と環境悪化の分断を図る」、「同一価値の労働についての同一賃金」、「強制労働や人身売買の根絶」、「不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利の保護」などが、達成目標(ターゲット)として掲げられている。
 ディーセント・ワーク(decent work)は、日本語では「働きがいのある人間らしい仕事・雇用」と訳されているが、生産的で、公正な収入や安定した雇用形態と安全な労働条件、そして社会保障を伴い、個人の成長と社会的統合(social integration)を促進する仕事のことを指す。
 日本の現状は、これらの目標達成には程遠い。男女間の賃金格差は2022年にはG7(主要7ヶ国)中最大で、女性の非正規雇用率は53.2%と非常に高い(2023年の労働力調査による)。さらに103万の壁に象徴される扶養控除や税制の問題など、課題は多い。
 こうした状況は日本社会に広く深く存在する性別役割分業意識と密接な関係があり、災害時にも継続するだけではなく、より顕著になる。避難所や地域での炊き出しなど無償の貢献をした者の多くは女性であり、瓦礫処理など有償の仕事の多くは男性が担ったことは、典型的な例であろう。
 目標8は、「雇用、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業の促進」も到達目標に掲げている。地震や津波によって観光業は大きな打撃を受けた。原発事故の影響は風評被害を引き起こした。「復興五輪」という旗印のもと、多額の予算が注ぎ込まれた。しかし、資材や人手の不足に拍車がかかり、人件費も高騰し、かえって復興の障害となってしまったともいわれている。
 ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」は、日本における目標8の達成度には「重要な課題がある(Significant challenges)」という評価を下した。政府による「SDGs実施指針」(2023年改訂版)は、重点事項として「女性登用の加速化を含む女性の活躍と経済成長の好循環の実現」を掲げている。しかし、そのような好循環をどう実現していくのだろうか。抜本的で実効性がある施策が求められている。

*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)


労働者の復活

ここは多賀城の工業団地の一角。
震災で全ての操業が中止した。
5月頃から少しずつ創業が始まった。
そんな団地の中で、若者たちが野球を始めた。
昼休みなのか、その楽しそうな姿に、
思わずシャッターを切った。
労働者の日場がこんな風に復活していくのがうれしい。

まる子
宮城県多賀城市 2011年7月 撮影


誰もいなくなった理髪店

小さい子どものいる従業員が、放射能を心配して県外に
避難してしまいました。
開店し3年、やっと軌道にのってきたのに閉店せざるを
得なくなってしまいました。

全田
福島県郡山市 2012年1月 撮影


大事な煙

石巻を象徴する日本製紙の煙突から出る煙
震災で工場が被災し、稼動が停止してしまいました。
石巻にとってなくてはならない存在なんです。
たくさんの人が悲しみ、心配した。

工場再開! 煙突からあがる煙に息づく石巻が見えました。
でも、震災のつめ跡はまだ残っています。

石巻 高橋
宮城県石巻市雲雀野(ひばりの) 2013年10月 撮影