フォトボイスの効用

フォトボイスには多くの長所や効用があります。

写真を撮ることによって、これまで見過ごしてきた、あるいは避けてきたものやことと向き合ったり、その意味を考えるきっかけとなります。

フォトボイス・プロジェクトの参加メンバーは、「写真をとるということは、意図的に立ち止まるということ」、「写真を撮らなければ見過ごしてしまっていた」、「写真を見ると、あの時自分が何を見て何を感じていたかを思い出させてくれる」、「貴重な記録」など、写真を撮ること、撮った写真の効用について語っています。

フォトボイスの特徴は、「個人的な行為ではない」ということです。インターネットが普及した最近では、自分の経験を写真や動画にしてネット上に公表することは多く行われています。けれども、フォトボイスでは、継続的なグループでの語り合いの中で、相互交流、相互援助が生まれます。そして、自分が撮った写真を改めて眺めたり、自分の経験や想いを言葉にしたり、他のメンバーの異なった視点に触れたりする過程で新たな気づきが生まれます。

また、写真と「声」を組み合わせることによって、写真だけでは、あるいは、ことばだけでは伝えるのが難しいことを伝えることができます。

写真と「声」を広く社会に公表することによって、何が問題なのか、なぜ問題が解決されないのか、どのような取り組みが必要なのかなど、問題の本質や解決への道すじを明らかにしていきます。

フォトボイスは、さまざまな社会問題の提起や解決のために効果的な参加型アクションおよび調査の方法として幅広い分野で用いられています。また、調査の過程において、参加者が知識や技術を向上することができます。

さらに、写真撮影、グループでの話し合いを通して明らかになった地域や社会の課題や改善のための提言を「声」にまとめ、政治家、政策担当官、メディアや一般市民に公表することを通して、社会政策やプログラムを改善していくことにもつながります。フォトボイス手法を使ったプロジェクトの多くでは、参加者(撮影者)自身が課題や提言を発信します。

雲南省でのフォトボイスプロジェクトを実施したWang教授は、「グループでの学び、表現、アクションを助長した。さらに、政策に関する論議に“新しい声”をもたらした」と述べています。

Wang, C., & Burris, M. A. (1994). Empowerment through photo novella: Portraits of participation. Health Education Quarterly, 21(2), 171-186.
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