
目標8には「経済成長と環境悪化の分断を図る」、「同一価値の労働についての同一賃金」、「強制労働や人身売買の根絶」、「不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利の保護」などが、達成目標(ターゲット)として掲げられている。
ディーセント・ワーク(decent work)は、日本語では「働きがいのある人間らしい仕事・雇用」と訳されているが、生産的で、公正な収入や安定した雇用形態と安全な労働条件、そして社会保障を伴い、個人の成長と社会的統合(social integration)を促進する仕事のことを指す。
日本の現状は、これらの目標達成には程遠い。男女間の賃金格差は2022年にはG7(主要7ヶ国)中最大で、女性の非正規雇用率は53.2%と非常に高い(2023年の労働力調査による)。さらに103万の壁に象徴される扶養控除や税制の問題など、課題は多い。
こうした状況は日本社会に広く深く存在する性別役割分業意識と密接な関係があり、災害時にも継続するだけではなく、より顕著になる。避難所や地域での炊き出しなど無償の貢献をした者の多くは女性であり、瓦礫処理など有償の仕事の多くは男性が担ったことは、典型的な例であろう。
目標8は、「雇用、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業の促進」も到達目標に掲げている。地震や津波によって観光業は大きな打撃を受けた。原発事故の影響は風評被害を引き起こした。「復興五輪」という旗印のもと、多額の予算が注ぎ込まれた。しかし、資材や人手の不足に拍車がかかり、人件費も高騰し、かえって復興の障害となってしまったともいわれている。
ベルテルスマン財団・SDSN*による「持続可能な開発報告書2024」は、日本における目標8の達成度には「重要な課題がある(Significant challenges)」という評価を下した。政府による「SDGs実施指針」(2023年改訂版)は、重点事項として「女性登用の加速化を含む女性の活躍と経済成長の好循環の実現」を掲げている。しかし、そのような好循環をどう実現していくのだろうか。抜本的で実効性がある施策が求められている。
*持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(The UN Sustainable Development Solutions Network)
労働者の復活
ここは多賀城の工業団地の一角。
震災で全ての操業が中止した。
5月頃から少しずつ創業が始まった。
そんな団地の中で、若者たちが野球を始めた。
昼休みなのか、その楽しそうな姿に、
思わずシャッターを切った。
労働者の日場がこんな風に復活していくのがうれしい。まる子
宮城県多賀城市 2011年7月 撮影
誰もいなくなった理髪店

小さい子どものいる従業員が、放射能を心配して県外に
避難してしまいました。
開店し3年、やっと軌道にのってきたのに閉店せざるを
得なくなってしまいました。全田
福島県郡山市 2012年1月 撮影
大事な煙
石巻を象徴する日本製紙の煙突から出る煙
震災で工場が被災し、稼動が停止してしまいました。
石巻にとってなくてはならない存在なんです。
たくさんの人が悲しみ、心配した。
工場再開! 煙突からあがる煙に息づく石巻が見えました。
でも、震災のつめ跡はまだ残っています。
石巻 高橋
宮城県石巻市雲雀野(ひばりの) 2013年10月 撮影